News

2025.08.18

ヒト脂肪組織由来血小板様細胞(ASCL-PLC)の難治性皮膚潰瘍治療を対象とした 臨床研究の成果を発表

ヒト脂肪組織由来血小板様細胞(ASCL-PLC[*1])の事業化に取り組む慶應義塾大学発ベンチャーである株式会社AdipoSeeds(所在地:東京都新宿区、代表取締役社長:不破 淳二、以下AdipoSeeds)が、慶應義塾大学病院と共同で実施した難治性皮膚潰瘍を対象とした臨床研究について、Regenerative Therapy(Volume 30, December 2025, Pages 606-615[*2]、タイトル:Safety and efficacy of long-shelf-life allogeneic adipose-derived mesenchymal stem cell line-derived platelet-like cells for refractory foot ulcers: A translational preclinical and phase 1/2a study)に掲載されましたのでお知らせ致します。

 

臨床研究では、ASCL-PLC の安全性に関して特段の懸念は認められないこと、また、投与から 12 週後までに潰瘍が完全閉鎖するなど一定の有効性が認められることが示されました。

 

AdipoSeedsでは、こうした臨床研究の成果を踏まえ、ASCL-PLC(開発コード: ADS-01 )の難治性皮膚潰瘍治療を対象とした国内における第 I/II 相試験を早期に開始するための準備を進めております。既にPMDAに治験計画届を提出し、30日間調査期間も完了しており、2025年内の症例登録の開始を目指しております。また、AdipoSeedsは、上記の臨床試験を実施するため、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の創薬ベンチャーエコシステム強化事業に採択されておりますが、ステージ1(2024年8月から2025年9月まで)のマイルストーンを達成致しました。現在、ステージ2(2025年10月から2026年9月まで)に進むための申請を実施済であります。

 

AdipoSeedsでは、有効な治療方法のない難治性皮膚潰瘍の新規治療方法の開発が、治療に長い期間を費やすことを余儀なくされている方のQOLの改善のみならず、医療経済の改善にも貢献することを目指してまいります。

 

[難治性皮膚潰瘍について]

難治性皮膚潰瘍は、動脈血流障害または静脈うっ滞によって引き起こされる虚血に関連しております。虚血性潰瘍は、典型的には末梢動脈疾患、糖尿病、膠原病による血管炎などにより、静脈うっ血性潰瘍は静脈瘤を有する患者や深部静脈血栓症の後遺症として発症することが多くなっております。

動脈血流障害による皮膚潰瘍に対しては、末梢動脈疾患に対する治療指針に従い、高血圧症、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症を合併している場合には、これらに対する治療が行われ、合わせて血流改善を目的として、抗血小板薬が使用されます。さらに、症状に応じて歩行等の運動療法や血管拡張薬などの薬物療法も実施され、喫煙者には禁煙の指導が行われております。加えて、重症患者に対しては、カテーテルによる血管内治療や外科的バイパス術などの血行再建手術が実施されますが、これらの手術によっても、重症患者における皮膚潰瘍の治癒には時間を要しております。また、血行再建手術によってひとたび皮膚潰瘍の治癒が得られた症例においても、高率に皮膚潰瘍の再発がみられるといわれております。こうした標準的な治療を行っても皮膚潰瘍の改善効果が得られない方や、病変の部位や範囲によっては血行再建手術の対象とならない方、皮膚潰瘍の再発を繰り返すことで、下肢の切断を余儀なくされる方も多くいらっしゃるのが現状となっております。

 

一方で、静脈うっ滞による皮膚潰瘍も、動脈血流障害による皮膚潰瘍と同様に、治療に長い期間を要し、再発も高いとされております。

 

このため、これらの難治性皮膚潰瘍を対象とした新しい治療方法の開発が望まれております。

 

[AdipoSeedsについて]

AdipoSeedsは、「脂肪から血小板をつくり、新しい血液の流れを創る」をミッションとして掲げており、主に廃棄予定の脂肪から安全で医療応用可能な血小板製剤を低コストで供給し、今後の少子高齢化社会において、世界的に加速する血小板不足という課題の解決に貢献し、血小板の関わる治療行為をより安価に安全に提供できる未来を創り出すことを目指しております。

 

また、AdipoSeedsでは、「脂肪組織由来の血小板を用いた再生医療の実現」を通じて、献血に依存しない輸血用血小板製剤の実用化と血小板を用いた組織修復領域の拡大によるメディカルアンメットニーズの解消という社会的問題の解決に取り組んでおります。

 

(*1)  AdipoSeedsでは、ヒト皮下脂肪組織からスタンダードな方法で遠心分離して得られたASC(脂肪由 来間葉系幹細胞、Adipose-derived Mesenchymal Stem Cell)を含む細胞群から、ASCの欠点を克服するため、独自技術により精製・株化して樹立さされた間葉系幹細胞株ASCL(Adipose-derived  Mesenchymal Stem Cell Line)を、ASCL-PLC(ASCL由来血小板様細胞、ASCL-derived Platelet Like Cells)に分化誘導するという技術を基盤として、ASCL-PLCを再生医療等製品として、医療応用することを目指しております。

 

(*2)  学校法人慶應義塾と共同で実施した「難治性皮膚潰瘍を対象とした間葉系幹細胞由来血小板様細胞 (ASCL-PLC)の探索的臨床試験」の研究成果に関する論文は、以下のサイトに公開されております。

 

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352320425001749

 

  • HOME
  • NEWS
  • ヒト脂肪組織由来血小板様細胞(...